「年収1000万円でタワマンを買うと破綻する」ただの高給取りと本当のお金持ちを分ける"年収の分岐点"



タワーマンションといえば、お金持ちの象徴のひとつです。しかし多くの富裕層に接してきた経済評論家の加谷珪一さんは「タワーマンションは幻想の住まい。世帯年収1000万円の専業主婦家庭が5000万円のマンションをローンで購入するのは、かなりキツい」といいます――。

※本稿は、加谷珪一『150人のお金持ちから聞いた 一生困らないお金の習慣』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■タワマン居住者は「破産者予備軍」の可能性

最近はタワーマンション・ブームだが、東京の「一等地」の高台には多くの先住者がいる状態。したがって、新しい高級マンションの多くが、これまではあまり高級とは言われていなかった低地や海沿いに建てられている。

一部ではタワーマンションはお金持ちの象徴とされているようだが、現実はだいぶ違うようだ。タワマン居住者は、新たな破産者予備軍とも言われているのである。

東京圏ではタワーマンションは大きく3種類に分類される。

・都心に建てられた高級物件
・湾岸地域の物件
首都圏近郊の物件

都心部の超高級物件を購入する層は明らかに富裕層である。地方の富裕層がセカンドハウスとして購入するケースも多い。一方湾岸エリアタワーマンションを購入する層の中心は、富裕層ではなく大手企業のサラリーマン層が多いと言われている。

■タワマン好きの「昭和妻」

湾岸部のタワーマンションを購入しているのは、一昔前であれば世田谷区など郊外エリアに好んでマンションを購入していた層なのだ。彼らの年収は1000万円前後。富裕層には程遠いが、中小企業サラリーマンなどから見たら高給取りだ。しかも妻の多くが専業主婦であり、いわゆる「昭和妻」タイプが多い。

昭和妻とは雑誌『AERA』が名づけたもので、一流企業に勤める旦那さんを持ち、専業主婦、そして「マイホーム」「消費」「子供の教育」に血道を上げる昭和的価値観を持った女性ということらしい。

彼らは富裕層への憧れが強く、食材も高級スーパーで購入したり、外車に乗ったりしている。だが実際の年収は1000万円程度しかなく、可処分所得で比較すると、典型的な中間層である年収600万台の人と大して変わりない。しかも、年収600万円でも夫婦で共働きだと、収入は逆転されてしまう。

■タワーマンションは幻想の住まい

年収1000万円の専業主婦家庭が5000万円のマンションをローンで購入するのは、かなりキツい。少し贅沢な消費をしたり、子供の教育費がかさんでしまうと、たちまちお金がなくなってしまう。この状態で旦那さんがリストラされてしまうと、一気にローンが返せなくなり破産してしまう、というわけである。最近、突然経営危機に陥る大手企業が続出していることで、この懸念が現実のものとなりつつあるというわけだ。

一方、都心の超高級物件には富裕層が住んでいる。お金持ちは上り詰めるのも早いが凋落も早い。高級賃貸物件では2年から3年で住人がすべて入れ替わるとさえ言われている。その意味で、タワーマンションは幻想の住まいなのだ。

■働かずに生活できるのは、資産1億円

保有している資産の額が、その人がお金持ちかどうかを決める最大の要素となる。では、どの程度の資産を持っていれば、「お金持ち」と呼ばれるのだろうか?

金融機関や富裕層向けビジネス関係者の間では、富裕層とそうでない人のひとつの分かれ目は、純金融資産を1億円以上保有しているかどうかだと言われる。働かずに何とか生活できるギリギリの水準が1億円だからという部分が大きいと思われる。

1億円の金融資産を運用すれば、どのような時代でも3.5%程度の利回りは何とか確保できる。1億円の3.5%は350万円。たしかに自力で生活できるギリギリのラインと言えるだろう。逆に言うと、1億円の金融資産があれば、働かなくても何とかやっていける、ということを意味している。

働かなくても余裕で生活するには、年収1000万円くらいはほしい。そうなると、3.5%の利回りで考えると約3億円の資産となる。

一方、年収ベースでお金持ちを考えた場合、境目となるのは3000万円である。年収が3000万円を超えると、お金の心配をほとんどしなくなると言われ、生活水準も大きく変化する。だが、2000万円クラスの人の多くは1000万円の人と大して違わない。

まとめると、お金持ちとそうでない人を分けるおおよその分岐点は、資産ベースでは3億円、年収ベースでは3000万円ということになる。お金持ちの入り口は1億円だが、5000万円くらいから人の思考回路は変化し始めるようである。

■年収1000万円はお金持ちではない

イメージしやすいリッチな生活の基準と言うと、やはり年収1000万円ではないだろうか? だが年収1000万円は決してお金持ちとは言えない。実は年収1500万円までは、年収500万円の人と基本的な生活スタイルは変わらないことが多い。収入が絶たれてしまうと生活が成り立たなくなるという意味においても条件は同じだ。

これが3000万円を超えると、生活のレベルが変わる。たとえばレストランの話題でも、「行った」という話ではなく、レストランオーナーになっていたりする。生活の質が根本的に変わるというのは、こういうことを指すのだ。

実は、年収1000万円の人の家計は、収入が低い人よりもずっと苦しいというのである。

ある経済誌が組んだ富裕層の特集で紹介された、年収1000万円のプチ(ニセ?)富裕層の悲惨な日常生活によると、年収1000万円の人は、400万~600万円の人に比べて富裕層への憧れが強く、過剰な消費に走っているというのだ。年収1000万円世帯のエンゲル係数が、400万円世帯よりも高いというデータ明らかにされている。

特に40代で大企業に勤め、妻は専業主婦というパターンが一番危ないそうだ。このタイプの家庭の必須アイテムは、海外製ベビーカー、高級鍋、ウォーターサーバー、こだわり家電など。これらが積み重なると相当な出費となる。

■日本は終身雇用の国ではなかった

戦前の日本には終身雇用という概念はなかった。その状況を大きく変えたのは太平洋戦争である。戦争遂行を最優先するため、国家が経営に介入し、従業員の雇用も保障させた。戦後、大企業を中心にその慣行が残り、最近までそれが続いていただけなのだ。

いまだに終身雇用が成立していると信じている一部大企業サラリーマンは、全収入を消費に回したりしている。1000万円の収入がありながら生活が苦しい世帯というのは、このようにして出来上がっている。

インターネットという強い味方がいる現在、情報収集能力を駆使すれば、500万円くらいの収入差は容易にカバーすることができる時代になった。たとえば不動産は、エリアを慎重に選んで中古でもよしとすれば築浅の物件が格安で手に入る。

夫婦共働きで年収350万円ずつであれば世帯年収は700万円である。堅実に中古マンションを購入し、貯蓄を進めていけば、最終的には1000万円浪費世帯よりリッチになることも夢ではない。そして共働きなら、万が一どちらかがリストラにあったり、病気になっても何とかやっていける。破綻することはないだろう。

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加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家
1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビラジオで解説者やコメンテーターを務める。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke


(出典 news.nicovideo.jp)